薬学生の実務実習を支える「認定実務実習指導薬剤師」という資格をご存じでしょうか?
これは、薬局や病院で学生を指導するために必要な資格であり、教育面でもキャリア面でも価値ある認定制度です。
薬剤師にとって『認定実務実習指導薬剤師』は転職の武器となるか?と言う記事も書きましたが、認定を取ることで転職をする際に履歴書に書くことで大きなアピールポイントとなります。
この記事では、この資格を取得するための流れや必要な条件を、現場目線でわかりやすくご紹介します。
詳しくは認定実務実習指導薬剤師認定制度実施要領が公表されておりますのでそちらをご確認ください。
認定実務実習指導薬剤師とは?
薬学部は6年制になるにあたって病院と薬局の2箇所で実務実習が必須となりました。
その実務実習は実際に臨床の現場に学生が学びに行くわけですが、その指導者は誰でも良いわけではなく一定の実務経験と研修を受けた人が学生に教えられることになっています。
それではその認定を受けるための手順を解説していきます。
資格取得のためのステップ
認定実務実習指導薬剤師認定制度実施要領を読むと『基本的資質』と言った気持ちの面で学生へ教える事や薬剤師という仕事に対する姿勢が書いてありますが、ここでは条件的にどのようなことをすれば認定が取得できるのかを解説していきます。
実務経験を満たし勤務状況を確認する
認定を受けるには必要な実務経験が求められます。
上記が必須条件です。その他に勤務先の望ましい条件というものが記載があります。
以上のように望ましい条件も設定されています。
病院の場合は総合病院であれば大体の場合が該当しますし、薬局も多くの場合は条件を満たすと考えられます。
そもそも『望ましい』と言う記載がある通り必須ではないことから①②の勤務条件を満たせば認定を受けることができます。
所定の研修を受講する
次の認定実務実習指導薬剤師養成研修をすべて修了した薬剤師が条件です。
①講習会形式の研修
講座は①〜④まであるのですが、④は更新者のための研修のため新規の方は①〜③まで受講することとなります。
この研修は半日で終わり、ビデオを見るだけとなるので研修会としては受講してレポートを書く程度ですのでそこまで労力がかかるものではありません。
講習会形式は薬学教育協議会から発表されています。2025年はこちら。
各都道府県の薬剤師会が行なっていることが多く、毎年同じような時期に開催されています。
お住まいの都道府県薬剤師会が毎年いつくらいに募集しているか確認してみましょう。
兵庫県薬剤師会は定員50名で令和7年度4月20日に実施しております。兵庫県薬剤師会会員は1,000円、非会員は5,000円、他県の薬剤師会員は1,000円と他県からの受講も受け付けておりますので、どうしても自身が住んでいる都道府県の研修会と都合が合わない場合は薬学教育協議会のリストから他県の研修会を探し、薬剤師会に問い合わせてみてください。
②ワークショップ形式の研修
認定実務実習指導薬剤師認定制度実施要項には上記の記載があります。
①講習会形式と同様に薬学教育協議会のホームページからワークショップ開催予定一覧が発表されていますので確認しみましょう。
一つの例として茨城県薬剤師会のホームページをみてみましょう。

日程は2日間組まれておりみっちり研修することになります。私も過去に参加しましたが、グループワークで学生に向けてどのような指導をするのかなど議論する時間が多く、かなり大変な研修会だったと記憶しております。
茨城県の場合は募集は18名(薬局12名、病院6名)。日程も9月と1月に予定されておりますが日程の希望は出せません。県内でこれしか受けられないと考えると狭き門であることがわかります。
栃木県と群馬県で共同開催していることもあり他県でも受験できるようですが、参加枠が少ないことを考えると現実的ではありません。
参加費は栃木県が開催しているもので15,000円と安くはないため『とりあえず受けておこう』ではなく、認定をしっかりとるつもりで受けることが望ましいですね。
③申請をする
①と②の研修会を受けたらあとは申請するだけです。
注意点として下記の通り古すぎる研修会を受けた場合は修了証が使えなくなります。
また現在の勤務状況として
とあり、パート勤務などでは勤務時間の条件を満たせないことも注意が必要です。
実習生を教える場合は週に5日間は学生に指導しなければならないですので、少なくとも週に3回は出勤をしていないとダメということですね。
条件を確認したら薬学教育協議会より申請しましょう。
取得するための費用
①講習会形式の研修
各種薬剤師会が実施しているのですが、薬剤師会会員であれば1,000円〜3,000円くらい、非会員は5,000円くらいが多いようでした。
②ワークショップ形式の研修会
こちらも各薬剤師会が開催しているものですが10,000円〜20,000円くらいが多いようです。
③申請費用
認定実務実習指導薬剤師認定制度実施要項に『13.(1)認定申請 5,500円』と記載があります。
合計
薬剤師会の会員かどうかにもよりますが、20,000円〜30,000円の費用がかかると考えられます。
まとめ
今回は認定実務実習指導薬剤師の取得方法についてまとめてみました。
この認定制度は薬局や病院が実習生を受け入れるために必要なものであり、持っているだけて薬局として
- 実習の報酬として約30万円臨時収入が入る
- 実習生を受け入れることによって将来の採用候補者として期待できる
- 入れ替わりの少ない薬局にとって良い刺激になる
といった多くのメリットを享受できます。
研修としても①講義形式は1日で終わりますし、②ワークショップ形式は2日間しっかりやるとはいえ研修を受けてさえしまえばテストなどなく取得できるものです。
6年毎の更新が必要とはいえ働いている人は職場へのメリットが大きいですし、転職を考えようとしている人は『取得資格』に書ける一つの武器になる認定資格です。
学生に教えるのが嫌いじゃない方は職場と相談して資格取得を目指してみてはいかがでしょうか。
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