2020年ごろに小林化工の抗真菌薬イトラコナゾールへ睡眠誘導剤の混入事件や、日医工の出荷試験などで法令違反があり32日間の業務停止命令が出るなど、それまでは『午前中に注文しておけば午後には入ってくる』ことを常識としていた医薬品流通が不安定となり、2026年現在も多くの医薬品の出荷調整や出荷停止が相次いでいます。
病院の入院患者さんであれば、病院として採用している医薬品を入荷するものから変更し医師とコミュニケーションを取ることで手に入るもで治療薬を選択していくことができますが、院外処方を受ける調剤薬局としてはいつどんな薬の処方箋が飛んでくるのかわかりませんし、突然入荷困難な薬の処方箋を患者さんが持ってくることもあります。
また、継続的に服用している薬でも『今まで服用している患者さん全員の分の供給は難しい状況』『今までの患者さんを超えて供給が可能』だったりと、薬品ごとや時期によっても入ってこないものを切り替えてしまうのか?入荷を待って薬の不足状態でお渡しして良いのか?調剤薬局の薬剤師は状況に応じて判断しなければなりません。
今回は出荷調整が続いている医薬品の流通状況を調べる方法と、その医薬品が入ってくるかの判断方法の目安を解説します。
あくまでも私の感覚の話ですので調べる際の参考にしていただき、患者さんへの対応は自己責任でお願いします。
メーカーが発表している出荷状況の意味を知る
厚生労働省の発表にある通り、医薬品の出荷状況は製造販売業社から出荷の制限(限定出荷)や出荷の停止(供給停止)と言った供給不足の発生を受け、エクセルファイルの一覧表として整理して公開されています。
文章の初めには出荷が滞っている理由、さらに『出荷対応の状況』と『出荷量の状況』について、どのような表現で状況を表しているのかを知っておく必要があります。
出荷が滞っている理由

とある潰瘍性大腸炎・クローン病に使われる薬を見てみましょう。
この錠剤については「顆粒製剤の代替品として買われているから”新規”はやめてください。」と書いてあります。
つまり、今飲んでいる人の分は確保できそうかなと予測がつきます。
ちなみに、製品によっては「原材料の入手が困難なため」とか、「海外製造拠点の工場の関係で〜」などダメな理由が書いてあります。その文章からなんとなく入荷しそうかどうかを想像して、実際に下記に続く情報をみていきます。
「出荷対応」の状況

『通常出荷』や『限定出荷(自社の事情)』と言った表現がされます。
注文すれば確実に納品される『通常出荷』や、注文しても全て納品できるわけではない『限定出荷(その理由)』がざっくり書かれています。細かい表記は以下の通りです。
①通常出荷であれば、大体の商品は発注をすれば翌日の午前便で医薬品卸より納品が見込めます。
②限定出荷(自社の都合)は要注意。工場での生産や流通に問題があるなど、自分に原因がある状況です。こちらの場合は次の「出荷量」の状況も必ずチェックが必要です。
③限定出荷(他社品の影響)はすでに使っている患者さんについてはとりあえず一安心。他の会社の出荷制限によって注文が流れてくるのを防いでいる状況です。ただし、卸さんの配分ミスなどによって入荷が難しくなる可能性もあるので在庫確保はしっかりしておきましょう。
④限定出荷(その他の理由)は理由によります。個別ケースなのでその都度判断します。
⑤出荷停止は諦めます。この案内をするということはメーカーが白旗を振っている状況ですので代替品を検討し医師に問い合わせをしましょう。
「出荷量」の状況

続いて「出荷量」を確認します。こちらがかなり大事で、その医薬品がどれくらい流通しているかを確認していき今後の入荷量を予測していく重要な案内となります。
Aプラス→これは楽観的に考えてOK。過去実績と比べてかなり多めに出荷できているため、今まで入荷がなかったものでもおそらく入ると判断しても良いでしょう。
A出荷量通常→こちらは今まで使っている患者さんに関しては大丈夫と判断することが多いです。新しく処方された患者さんも概ね大丈夫かなと言った感じですが、長く続くのか?卸の余裕はどれくらいあるのか?はよく確認したほうが良いです。
B出荷量減少→これは結構まずい状況。90%を切っているということは今まで使っていた人の分を十分に確保できないと思ってよいです。タイミングによっては薬がなくなる可能性もあるため、代替案は考えておいたほうが良いでしょう。
C出荷停止→この文言をみた時点でもう代替案を考えましょう。だましだまし入ってくるかもしれないですが、いずれ手に入らないことが確定しています。
D薬価削除予定→こちらももう手に入らないと思ってよいです。この時点で電子カルテで処方すら打てない状況であることが多いと思います。
それではこの錠剤は入ってくるのか?
この製剤は
- 他製剤の需要増大に伴い錠剤は出荷制限をかけている
- ②限定出荷で原因は自社の都合による
- A「通常量出荷」で既存の患者さんの分は手に入りそう
といったことがわかりました。
この3点を総合的にみて私は「既存患者の分は少なくとも入ってくる」「新規患者は厳しそうだな」という結論をつけます。
ここで気をつけたいのは医薬品卸の流通システムを理解した上で発注することです。

卸の流通の仕組みとして 全国物流センター>東北物流センター>各市町村レベルの支店(営業所)のように、全国規模の在庫から段階を経て各市町村レベルの支店に在庫が割り振られてきます。
出荷制限は製薬会社が各卸業者に向けて『昨年の半年間であなたのところに60箱を出荷しました、1月あたり10箱です。A出荷なので今月も10箱送っておくから各医療機関にちゃんと割り振っておいてね。』というざっくりとした出荷にならざるを得ません。
製薬会社から実績ベースで送られてきた製品を卸業者の本部が『今月は山形には2箱、秋田には1箱』と言った感じで実績を見てさらに配分するため、卸の支店ごとに実際に商品があるとも限りません。
これを念頭に置いた上でこの製品が2ヶ月処方出た場合、納品していただいている卸に電話をして「この錠剤はA出荷であり、毎月300錠ずつ納品していると思います。毎月300錠は入りますか?」という聞き方をすれば
MS実績は毎月300錠の割り当てがあります。一気に500錠は難しいですが、今月に300錠、来月にも300錠納品できると思います。
というように、納品する卸としても患者さんの手元にある薬を切らさないように割り当てをうまく使いながら現実的な数字を教えてくれます。
まとめ|メーカーの公式文書から正しく情報を読み取ろう
今回は製薬会社が発表している公式文書から
- 出荷対応の状況
- 出荷量の状況
- 出荷調整の原因となっている理由
を読み解いてみました。このような状況をしっかりと理解して読み解くことで



うちの薬局で採用している薬は『他社状況の関係でA出荷』だから大丈夫そうだな



この商品は『原材料が入手しずらいB出荷』だからいずれなくなるだろう。代替品を早めに先生に相談した方が良いな
と言ったように、その商品の今後の出荷予測をすることで「薬が入らない!急いで疑義紹介して変えてもらわなければ💦」と言って患者さんを待たせることも少なくなります。
処方をする医師としても



先生すみません、商品がないので変更をお願いします!代替品はちょっと調べます💦
と処方した後で突然言われるよりも、商品が無くなりそうな時点でトレーシングレポートを作成して



この製剤が手に入らないかもしれません。流通状況を加味しまして潰瘍性大腸炎であれば〇〇を、クローン病であれば△△をご検討ください。
と言った感じで、事前にお伝えしておけばもし不足して疑義紹介が必要になっても指示の変更に柔軟に対応してくれることでしょう。
DSJPや厚生労働省の出荷状況も活用しながら、製薬会社の公式な文書を読み解き、必要な薬が必要な患者さんに行き届くよう薬剤師としてのスキルとして出荷状況を把握できるようにしましょう。






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