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中小薬局への転職面接で「研修費の助成はありますか?」は損をする質問かもしれない理由

転職活動をしている薬剤師が気にしている要件の中にこのような質問があります。

「研修認定薬剤師の取得費用は会社が出してもらえますか?」
「学会への参加費用の補助はありますか?」

この質問、大手チェーン薬局への転職であれば全く問題ありません。むしろ確認しておくべき重要な条件です。

しかし中小薬局への転職面接でこの質問をすると、知らず知らずのうちに自分の印象を悪くしている可能性があるとともに、あまり意味がない質問となってしまっている場合があります。

今回は中小企業の薬局経営者として上記の質問が”中小企業の薬局”において意味をなさない事を解説していきたいと思います。

目次

大手チェーンと中小薬局では「給与の決まり方」がまったく違う

大手チェーン薬局の場合

アイン薬局や日本調剤のような大手チェーンには、ほぼ確実に明確な給与テーブルが存在します。

「経験◯年目・薬剤師職◯等級なら基本給◯◯万円」「管理薬剤師になれば月額◯◯万円のプラス」というように、年次・役職・経験によって給与が細かく定められています。

大手の薬局は雇用している薬剤師の数もかなり多くなり、一律に給与テーブルを決めないと人事評価にかける時間がかかりますし、評価する管理薬剤師の負担も大きくなってしまうため、目安を作らざるを得ないからです。

このような環境では、研修費や学会参加費を会社に出してもらうことは自分の手出しを減らすことに直結します。どうせ給与テーブルで年収は決まっているのだから、研修に関わる費用については会社に出してもらいたい。これは合理的な考え方です。

中小薬局の場合

一方、中小薬局には多くの場合、固定された給与テーブルが存在しないことがほとんどです。

「経験3年目だから年収430万円」「管理薬剤師なら年収550万円」といった決まりがなく、採用する人材のスキルや経験、タイミングなど交渉次第で年収が変わるのが中小薬局の特徴です。

極端なことを言うと

社長

急な薬剤師の退職があって1人で休みなく働いている。3年目でも600万円出すから来月から来てください!

なんてことも考えられます。大手であれば豊富な薬剤師資格者がいますので、他の薬局から週の半分くらいを応援に行ってもらって、チェーン店全体での負担を軽減して新しい人を雇うことができたら元の人員に戻すと言ったことができますが、1店舗だけで営業しているような薬局は人件費の高い薬剤師を余裕を持って採用することはできず、薬剤師が辞めた時に焦って採用活動することも多々あります。

大手チェーン薬局 vs 中小薬局|給与の決まり方の違い

※大手チェーンの数値は各種公開情報をもとにした参考イメージです

🏢 大手チェーン薬局給与テーブルあり
等級・役職経験年数年収イメージ
一般薬剤師(G1)1〜3年目420〜460万円
一般薬剤師(G2)4〜6年目460〜500万円
一般薬剤師(G3)7〜9年目500〜540万円
管理薬剤師10年目以降550〜620万円
エリアマネージャー役職登用後650〜750万円
🏪 中小薬局給与テーブルなし
スキル・状況年収イメージ特徴
未経験・新卒380〜420万円交渉可
経験あり・即戦力450〜550万円スキル次第
管理薬剤師候補500〜600万円年齢不問
高スキル・希少人材600〜700万円+上限なし
※研修費を要求した場合▲数万円〜基本給に影響

🏠 諸手当の違い(家賃補助・交通費)

🏢 大手チェーンの場合🏠 家賃補助:月1〜3万円(独身寮・社宅あり)
🚃 交通費:全額支給(上限あり)
📖 研修費:会社負担
✅ 制度が明確で入社前に確認できる
🏪 中小薬局の場合🏠 家賃補助:なし〜あり(交渉次第)
🚃 交通費:実費支給が多い(上限あり)
📖 研修費:自己負担が多い
⚠️ 福利厚生を求めると基本給に影響することも

📌 経営者視点のポイント

🏢 大手チェーンでは給与テーブルが固定されているため、研修費・学会費・家賃補助など福利厚生で実質的な手取りを増やせる。条件交渉は合理的。
🏪 中小薬局では給与はトータルコストで判断される。研修費や家賃補助を要求するとその分だけ基本給が下がる可能性がある。

※大手チェーンの年収は各社公開情報・口コミサイト等をもとにした参考イメージです。中小薬局の年収は地域・規模によって異なります。

経営者が「研修費を出すなら基本給を下げる」と考える理由

中小薬局の経営者がどう考えるか、率直に言います。

給与というのは薬局が出す利益から出せる分が決まっています。研修費・学会参加費・交通費・福利厚生、これらはすべて人件費の一部です。

「研修認定薬剤師の更新費用を会社で出してほしい」という要望が来たとき、経営者の頭の中ではこんな計算が走ります。

社長

研修認定の費用は年間で数万円。それを会社が負担するなら、年収を数万円下げるしかないな。

つまり、研修費を出してもらう代わりに、その分だけ年収の上限が下がる可能性があるということです。

もちろん経営者が必ずそう考えるわけではありませんし、高い年収を維持したまま研修費を全額負担してくれる中小薬局もあります。しかしこの視点を知らずに面接で研修費の補助を強調すると、「この人はコストがかかる人材だ」という印象を与えかねません。

これは中小薬局がデメリットだということではない

ここで誤解してほしくないのですが、給与テーブルがないことは中小薬局の弱点ではありません。むしろ大きなメリットと捉えて欲しいところです。

大手チェーンでは、どれだけ優秀でも給与テーブルの上限を超えることはできません。30代前半で年収600万円を狙おうとしても、テーブルが「その年次は年収550万円」と決まっていれば、そこ止まりです。

一方で中小薬局では、スキルや実績次第で年齢・経験年数に関係なく高い年収を交渉できることがあります。「若くして高年収」「管理薬剤師をしなくてもそこそこの給料をもらえる」などを実現しやすいのは、実は中小薬局の方なのです。

大事なのは、目先の研修費の補助を求めるよりも、自分自身の価値を高めて年収そのものを上げる交渉をするという発想の転換です。

経営者の目には「どちらが魅力的」に映るか

ここで質問です。あなたが採用面接をする立場だったとして、次の2人の薬剤師、どちらを採用したいと思いますか?

薬剤師

「研修認定薬剤師の取得費用は出していただけますか?学会への参加費用の補助もあると助かります。」

薬剤師

「研修認定薬剤師はすでに自分で取得しました。スキルアップには積極的に取り組んできています。」

経営者として率直に言うと、当然のことながら下の薬剤師さんの方が圧倒的に魅力的です。

研修認定薬剤師という資格は、本来「薬剤師が自ら学ぶ意欲を持ち、継続的に研鑽を積んでいること」を認定するものです。

その資格を「会社に費用を出してもらって取る」のと「自分で費用を払って取る」のでは、その薬剤師の学習への姿勢がまったく違って見えます。

上の質問からは「会社に費用を出してもらうことが前提」という受け身の姿勢が伝わりますが、下の一言からは「自分で考えて行動できる人材」という印象を受けます。

人件費というお金を払う立場の経営者からすると、自分から学び成長しようとする人にこそお金を出してあげたいと思うものです。

ただし、「学会参加費」の質問は使い方次第でプラスになる

一点、補足があります。学会への参加費を会社が負担してくれるかどうかを聞くことは、必ずしも悪いことではありません。聞き方と文脈が重要です。

NG例:「学会への参加費用の補助はありますか?」(条件確認として聞く)

OK例:「薬学系の学会には積極的に参加したいと考えているのですが、御社ではそういった取り組みを支援していただける環境はありますか?」

前者は「お金を出してほしい」という印象ですが、後者は「自分は学会に行くくらい勉強熱心な人間ですよ」というアピールになっています。

私もそうなのですが、学会参加って全国で行われるところに会社のお金で行けるので仕事と称した小旅行みたいな意味合いで捉えている人も多いです。もちろんそれはそれで息抜きになると同時に、学会に参加して今後の服薬指導に活かしてもらうことでより良いパフォーマンスを出してくれれば良いのですが、聞き方によって「ただただ会社のお金で旅行したいだけの人」なのか、「学習意欲がある人」なのか、このニュアンスの違いなかなり大きいです。

まとめ|中小薬局の転職活動はトータルの収入を考えよう

中小薬局への転職における収入面で大事なところは「どれくらい研修費などもらえるか」など細かいところにとらわれずに『トータルいくらもらえるのか?』が鍵となります。

  • 薬剤師研修センターの認定補助がある年収550万円
  • 認定の補助が一切ない年収570万円

以上のどちらが結果的に手元に残るお金が多いでしょうか?

実はこの問題は「給料でもらうと税金がかかるけど、研修費だと無税。」のように複雑になるのですが、金額が大きいほど有利になることは間違いありません。

研修費の補助を聞くことで自分の評価が下がるリスクがあるなら、その質問は後回しにしましょう。それよりも、自分がすでに持っているスキルや経験、これから提供できる価値を具体的に伝える方が、年収交渉においても圧倒的に有利です。

給与テーブルがない分、中小薬局では「交渉できる人」が高い年収を手にします。面接はその交渉の始まりです。

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