5年位で私が経営している薬局では出産を期に薬剤師という仕事から離れ5年程度ブランクが有り職場に復帰した人が2名、他の薬局で正社員として働いていて転職活動をしていた方を1名採用させていただきました。
ブランクある人とない人を採用してみて改めて感じたことはタイトルの通り『時間があるなら少ない時間でも良いから薬剤師の仕事に片足を突っ込んでおく』ことが転職に大きく有利であることです。
経営者が薬剤師を雇用するにあたってこのブランクがどれくらい採用する意欲に関わってくるのかを解説します。
正社員で転職してきた人は即戦力で入職当日から服薬指導が可能
雇った人の中に、調剤薬局→ドラックストア→調剤薬局という経験のもと入職してくれた方がいらっしゃいました。
その方は働きながら転職活動をしていたためブランクは有りません。
入職当日ですが
入職当日なんですけど、服薬指導ってできますか?
全然大丈夫ですよ、行ってきます!
今日は整形外科で検査してきました
骨密度を測ってきたんですね!ちょっと見せてください。
数字は下がっていないので問題ないです。ちゃんとおくすり飲めている証拠ですね。
この検査値の見方ですが、~~~~~~~~~~~
以上のように、まるで去年からその薬局にいたような顔をして服薬指導を行っていて驚きました。
薬剤師はガイドラインに沿った治療・治療薬が使われているため日本全国のどこへ行ってもそのスキルがそのまま使えることを実感しました。
一方でブランクが有る薬剤師の反応は?
私の薬局では出産・育休を取る際に転勤が叶わず退職したことにより数年のブランクが有る人も雇っています。
数年という期間現場から離れると糖尿病薬はSGLT2が登場したり、循環器系ではARNIと呼ばれるエンレストが発売されたりと使用されている薬は大きく変わります。
当然のことながらブランクが有ると以下のような反応になります。
服薬指導ってできそうでしょうか?
ちょっと心配なのでもう少し調剤で薬を触ってからにしたいです。
服薬指導の様子も見させていただけると助かります。
責任感が有り良い発言ではありますが、ピッキングをするだけであれば『0402通知』と呼ばれている平成31年に出された「調剤業務のあり方について」という文章で薬剤師以外が実施しても差し支えない部分とも言えます。
経営者としては薬剤師の高い時給で働いていただいているなら、1日でも早く服薬指導といった形で薬剤師にしかできない業務をしていただきたいのが本音です。
子供が小学生になってから働こうかという人は5年ほどのブランクが空いてしまうことになりますが、1年程度なら使用している薬も大きく変わらないでしょうし服薬指導の感覚もまだ残っていると思います。
その感覚を忘れずにつなぎとめるためにも少ない時間で現場に出るというのは良いことかと思います。
週1回・3時間の勤務というのは現実的なのか?
そこで冒頭に出てきた週1回勤務という働き方が可能なのかを検討してみます。
流石に出産をして0歳時をみながら働くというのは現実的ではありませんが、お子さんが1歳になりおじいちゃんおばあちゃんなどの家族の手がかりれるような環境の場合、通勤を含めた4時間程度の時間の確保は可能ではないでしょうか?
そのような薬剤師が面接に来たときの経営者の胸の内を考えてみます。
子供が1歳になったので、働きたいと思って応募してみました!
子供はまだまだ小さいですし、申し訳ないんですけど週に1回くらい3時間程度で働きたいんですけどだめでしょうか?
子供の体調が悪い時はお休みもいただくかもしれないのでご迷惑をかける可能性が高いですし、現場復帰したいのが本音なので時給は1000円とかでも大丈夫です。
正直、週1回の3時間程度ではあんまり戦力にはならないな。
だけどブランクも1年程度だし何より子供が大きくなったらフルタイムになってくれるかもしれない。
時給も1000円なら悪くないか。
と言った感じで将来的な活躍を見据えて採用は前向きに考えられます。
ここでポイントとなるのは時給を低く設定しているところです。
この薬剤師を雇うに当たり薬局が必要な年間経費は『1,000円×3時間×52週間=156,000円』となり、毎月1万円ちょっとで将来の正社員候補を雇える可能性が高いです。社長の給料を年間16万円削ってでも雇ってみる価値はあると考えると思います。
週1回働くために抑えたいポイント
相場並みの時給は諦める
『薬剤師 パート 時給』などで調べ始めると相場としては2,000円~という記事を多く目にします。
薬局を経営している立場から見ても時給の相場は2,000円~2,500円くらいかなと行った印象です。
週に1回しかも3時間、子どもの体調不良や参観日ですぐ休む可能性あり、おまけに少なくとも1年のブランクありという条件がかなり悪い状況で働くことになるため何かを妥協しなければなりません。
時給を最低賃金付近に自分から伝えることで経営者としてはかなり雇いやすくなるので、時給を妥協することで働く場を獲得すると言った考えが良いと思います。
転職エージェントを通した転職は難しい
『薬剤師 転職』で検索すると上の方に出てくる転職エージェント。転職を考えたときに登録することで無料で利用できるうえにその時期やエリアでの相場を知ることができ重要な情報源となります。
ただエージェントを使うことで企業側が想定年収の3割程度の紹介手数料を払うことになりそれは人を採用するときの大きなデメリットとなります。
単純計算で年収の3割なら良いのですが、転職エージェントは最低料金が30万円などありどんなに年収の安い契約でも少なくない手数料がかかってしまうためエージェントを通しての採用は難しくなります。
逆に転職エージェントに「そんな求人はない」と言われても諦めずに自分で行動すれば良い結果は得られる可能性が高いです。
自分で自分を売り込む必要がある
転職エージェントが使えないということは自分で薬局に連絡をして交渉する必要があります。
薬剤師は営業が苦手な人が多い印象がありますが、子どもの薬を薬局でもらったついでや家の近くにふらっと立ち寄って『薬剤師募集してませんか?』と自分から聞いてみることが必要です。
週に1回や2回など少ない時間だと断られることも多いかもしれませんが、それでも諦めず声をかけ続ける忍耐力が必要です。
短時間勤務のメリットとデメリット
短時間勤務をすることによるメリットとデメリットを経営者目線で上げてみたいと思います。
メリット
・少ないながらも給料が入る
・現場経験をつなぐことでフルタイム復帰するときに転職の武器となる
・家庭以外のコミュニティができるので気晴らしになるかも
以上のように金銭的な面はあまり大きくないですが、ブランクがないことにより時間が更に空いたときにその職場で時間を伸ばしてもらえる可能性はあります。またその職場で人員が充足している場合は他の転職先を探すことになりますが、ブランクなしだと即戦力だと認められるため転職にも有利となります。
おまけになりますが、仕事をすることで子育ての悩み相談や愚痴を吐き出す先、小学校や幼稚園を選ぶときにどういう選択肢があるのか?など情報収集する場にも有効だと思います。
デメリット
・労力がかかる
・仕事をすることで家庭が疎かになるかも
大きなデメリットはありませんが、自分で動くため勇気を出して聞いてみたのに断られちゃったなんてことは多いと思います。
また責任感がある人ほど「出勤しなければ!」となり家庭をおろそかにしてしまう可能性が高いです。
もし働こうと薬局を探す時はどの程度休めるか?働けるか?など正直に相談しながら働き方を考えるのが良いと思います。
子供が大きくなって少し時間ができてきたら薬局に需要がないか聞いてみよう!
子育て世代に限らず薬剤師免許を持っているなら一度ご自身の足を使って転職活動を初めてみましょう。
一時的に安い給料で働くことになるかもしれませんが、その経験は数年後にしっかりと給料をもらうための大きな経験となり武器になります。
『断られる前提』位の気持ちで薬局に立ち寄った時はぜひ就職の話を聞いてみてください。
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