薬剤師は医師の処方せんのもとお薬を調剤し、調剤報酬より報酬を得ているため日本全国どこへいっても同じような仕事内容を求められます。
原則的には全国どこでも同じスキルが求められるのですが、立地次第では受け付ける処方せんが総合診療科なのか、皮膚科なのか、抗がん剤があるのか、職場環境では残業が多い職場なのか、在宅医療に力を入れているのか、学校薬剤師が業務として認められるかなど実は大きく違ってきます。
実は在宅医療に携わりたかったのに日々の業務に追われてしまい、目の前の処方箋をこなすだけになってしまう、子供が大好きなのに高齢者ばっかり!など本来かかわりたかった医療とのギャップがある場合は転職が良い選択の一つとなります。
冒頭にお伝えしたように薬剤師の大まかな業務は日本全国共通のため、ある程度の経験や認定・スキルがあれば転職しても次の職場ですぐに活躍することができます。
薬局を経営している立場からみて薬剤師の転職は大きく分けて3つの選択肢があると思いますので、採用する企業の目線から順にメリットデメリットを紹介いたします。
転職エージェントを活用し転職先を探してもらう
『薬剤師 転職』とインターネット検索をかけるとまず上の方に出てくる転職サイトです。
マイナビ薬剤師や私の経営している薬局も紹介先企業として登録していただいており、薬剤師のご紹介をしていただいております。
私の経営する薬局でも実際に求人情報を登録しており、実際にコロナ禍にパート希望の薬剤師を紹介していただき、今ではなくてはならない存在となっております。
転職エージェントの力を借りる際のメリットデメリットを挙げてみましょう。
メリット
転職者
- 求職者の利用は完全無料
- 薬剤師の転職を得意としているエージェントに経験や希望条件から自分の相場を教えてもらえる
- 面接後にお断りする場合はエージェントが断ってくれるのでストレス軽減
- エージェントが間に入るので金額交渉などもしてもらえるかも
- 面接の日程なども調節してもらえるため自分はほぼ動く必要なし
- エージェントは常時企業の採用情報を把握しているので良い条件のところにピンポイントで紹介してもらえるかも
採用企業
- 広告を出さなくても紹介により求職者がやってきてくれる
- 大手企業が仲介として入ることで中小薬局でも面接の機会をいただける
- 求職者へのアプローチ方法がないので紹介してもらえるだけありがたい
- エージェントを挟むことで条件に合わないミスマッチを防げる
- 転職エージェントへの手数料は成功報酬であるため、採用しなければお金はかからない
デメリット
求職者
- 転職エージェントからの電話やメールがしつこい場合がある
- エージェントへの手数料分が年収にマイナスに働く可能性あり
- 年収800万円目指せます!のような好条件が目にとまるが、へき地や労働時間が変則など実際は好条件のものは少ない
- 登録しないとどこの企業がいくらで募集を出しているのか詳細を知ることができない
採用企業
- 安くはない手数料がかかる(※かなり重要)
- 採用後に合わない人材だったとしても手数料はほぼ返ってこない
転職エージェント利用のまとめ ※採用側の意見
求職者、採用企業ともにとにかく楽ちんというメリットがあります。
ただ、採用側にとってこの”手数料”というのが給与条件や、未経験者だけどとりあえず採用してみようという行動に強烈なブレーキをかけるのも事実です。
ちなみに、転職エージェントの手数料は年収の30%-40%と決して安くはありません。
薬剤師の大体の相場500万円くらいだと150万円、パート勤務でも時給2,000円×4時間×週3回×52週でも年収は1,248,000円となり手数料は約37万円となります。
参考 → 中途人材紹介の料金・手数料の相場は?(※外部のサイト)
利用すべき人として
- 病院や薬局に勤務していて残業も多く家事もこなすので全く時間がない
- 今の職場にある程度満足しているけど、転職するとしたらどのような条件で出来るのか知りたい方
- 転職するにあたり何からしていいのかわからない方
- めんどくさがり屋で連絡するのを後回しにしてしまう癖があるので誰かにやって欲しい
- そこまで年収にこだわりはない
- 交渉事が苦手なのでプロに間に入って欲しい
以上のように、忙しい人や交渉事が苦手な人は転職エージェント経由の転職がおすすめです。
転職エージェント側も成功報酬(採用が決まらないとお金をもらえない)なので、転職に迷っている方の背中を強烈に押してくれると思います!
転職という言葉が頭をよぎっている方は登録する&エージェントへ相談するだけなら求職者は無料なので自分の相場を知るためにも転職や就職の第一歩として登録してみることをお勧めします。
転職エージェントは担当者との相性も大事です。もしマイナビ薬剤師の担当者が印象悪くてもエムスリーが良いなどエージェントの個人差がありますので、2~3社は登録してみると良いと思います。
ハローワークを使って求人を探す
メリット
転職者
- 公的な機関のためしつこい勧誘や電話などは心配なし
- 登録しなくてもハローワークのホームページからアクセスし、募集状況を閲覧できる
- 一度ハローワークに出向く必要はあるが、登録を済ませればインターネットで応募も可能
- 企業側の手数料がかからないため、良い条件を引き出せる可能性がある
- 募集要項に具体的な時給や年収、職場の紹介文など書いてあることが多い
- 企業への一番初めの電話はハローワーク職員がしてくれる
採用企業
- 公的な機関のため手数料がかからない
- 募集要項で求める人材や、提示できる年収・休日など細かく書くことができるのでミスマッチを防げる
デメリット
転職者
- 転職サイトと比べて希望の職場を検索しながら自力で探す必要がある
- 転職サイトと比べるとやはり見づらさ、探しづらさは否定できない
- 企業へ申し込むときにハローワーク職員が仲介してくれるが、薬剤師転職のプロではないためミスマッチの可能性も
- 面接を断るときは自分で断らなければならない場合もある
採用企業
- ハローワークの求人は3か月程度で無効になるため採用担当者のミスで求人が出ていないこともある
- ハローワークを挟むが、応募書類の送付などは求職者が行うので選考が遅れる場合がある
- エージェントのように専門的に薬剤師を取り扱っていないのでミスマッチが発生する可能性が上がる
ハローワーク利用のまとめ
転職エージェントが営業が積極的に採用企業を開拓しているのに対し、ハローワークは企業が自分で応募しないとリストに載らないため求人件数が少なくなってしまいます。
また、転職エージェントは登録さえ済ませればあとは勝手にやってくれるのに対してハローワークはある程度は自分で連絡を取り日程調整する必要もあります。
- 今の職場は残業もなく時間に余裕がある方で年収アップを目指したい方
- 自分のスキルを把握しており人に頼まなくても交渉が出来る方
- 最初のきっかけ(企業への電話)さえ誰かの手を借りれば行動を起こせそうな人
- 仕事にブランクがあり週に2回午前中など少ない時間から働きたい方
- 製薬会社勤務をしていて退職したなど未経験なので薬剤師としての職歴に自信がない方
以上のように、年収アップを目指したい人は自分に自信がある方、転職や就職の第一歩を誰かに背中を押してほしい人、経験が少なく働ける時間も少ないが働きたい人などが活用できる方法だと思います。
自力で探し薬局へ電話やメールをする
メリット
転職者
- 採用側の採用コスト(手数料)が抑えられるため金額交渉できる可能性が高くなる
- 紹介料がかからないため比較的手軽に雇用することができる
採用企業
- 余計な人を挟まないため余計な採用コストがかからない
- 短期間でやめてしまっても手数料がかからないためあきらめがつく
- 採用後にミスマッチだったとしても、紹介料を気にせず試用期間でお断りすることもできる
デメリット
転職者
- 薬局のホームページを探し、採用情報からメールするなど手間がかかる
- ホームページを作っている薬局は少なく、薬局を調べる手段は少ない
- 面接までの日程調整、条件交渉など自分一人で行わなければならない
- 内定が出ても断るときに自分で連絡するため、それがストレスになることも
採用企業
- 求人を出そうにもアピールする場所がない(ホームページがない)
- 面接のときに履歴書を見ながら希望条件や職歴など初めてわかるので良い人か判断する時間が少ない
自力で探すのまとめ
こちらは転職エージェントのメリットデメリットをちょうど逆にした形となります。
書き出すと求職者からすると圧倒的にデメリットが多く見えますが、企業側の本音では『数百万の手数料、しかも悪い人を採用して試用期間で断っても返ってこない。』この金額は薬剤師を採用するにあたり大きな負担となります。
- 自分のアピールポイントを把握していて年収アップを目指したい
- 自分で金額や勤務条件の交渉が出来る
- 薬局経験をいくつもしているので見学をすればよい職場かどうかを判断できる自信がある
- 未経験だけど週3回くらいから働きたい
- 薬剤師免許を持っているんだけど、体験気分で3か月くらい働いてみたい
- とにかく職場は家から近いところが良い
以上のように、自分のアピールポイントを持ったうえでの年収アップを目指す自信がある方、逆に経験がないけど薬剤師の免許を持っているしちょっと働いてみたいなという方はぜひ直接連絡を取ってみてください!
まとめ
3パターンの転職方法を紹介させていただきました。
他人に任せて手数料を払うのか、自分で動いて年収や休日など良い待遇を勝ち取るかを選ぶ形となります。
最終的にどのような転職や就職を行うかは進めながら考えられるので、求職者にとってほぼデメリットのないエージェントへ登録して相場を確認し並行してハローワークや自分で探すといった手段が良いと思います。
採用者側の本音として、
- 薬局に合う良い薬剤師であればエージェントに手数料を払ってでも欲しい
- 人が突然辞めてしまったなど人手不足の時はエージェントに手数料を払ってでも欲しい
- 人が十分にいる場合は手数料を払ってまでは欲しくない
- 手数料を払わなくてよいなら試しに採用してみてもよい
- 転職サイトを介さないで来てくれた人、わかってるじゃん!ボーナス多めに出しちゃうか!
といったことがあります。
実際に健歩薬局のような中小企業薬局は薬剤師を採用する事はかなり難易度が高く困っているため、転職エージェントからの電話はかなりうれしいのも事実です。
転職を考えている方はもしハローワークや求人サイトで募集がかかっていなくても、近所の薬局やご家族の薬をもらうついでに感じの良い薬剤師がでてきたら『薬剤師募集していませんか?』と聞いてみてください!
その場で見学会を開くくらい歓迎されると思います。
薬剤師の転職はエージェント+人によって自力で探しましょう
薬剤師が転職するにあたり、全員に言えることは求職者側からみると無料で利用が出来る転職エージェントがおすすめです。
エージェントにまずは相談してみて自分の経験やスキルから自分の年収や時給の『相場』を把握して、良い紹介案件があったらとりあえず練習がてら面接に行ってみましょう!
特に私の経営しているような1店舗のみの社長兼管理薬剤師の場合は、管理者の考えが色濃く出ますのでIT化が進んでいるのか、建物はきれいなのか、薬の管理はどのように行っているのかなど行ってみないとわかりません。
また、エージェントは転職関係に詳しいとはいえ薬剤師ではないので、調剤に対する姿勢や思いなどは社長や採用担当者に直接会って話をし、そこで働く従業員の姿を見て自分の薬剤師として働く場に適しているかを見極めていきましょう!
時間は取られますが、回数を重ねれば『良い薬局』『悪い薬局』も感覚でわかるようになってくると思います。
定年制度がどんどん後ろになっている現状で、薬剤師は体力勝負の仕事ではないので早めに良い職場へ転職し、やりがいのある仕事をやりがいのある職場でしていきましょう!
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