薬局で働く皆さんはスズケンやメディセオなど、医薬品卸に電話やネット注文をしてその日の午後や翌日に医薬品が納品されるというサイクルで医薬品を取り扱っていると思いますが、手元に入るまでにどのような経路を辿って手元に届くのかをご存知でしょうか?
医薬品は製薬会社が製造してから様々な経路を経て病院や薬局までたどり着いています。
その流通の仕組みを知ることで小さな薬局がより安定した医薬品の納入を実現することができますのでその裏側を見ていきましょう。
物流を知るにはそれを実際に行っている会社が一番知っているので卸のホームページを見ていきます。
流通の全体像
広域卸である東邦薬品にわかりやすい図があったので御覧ください。
東邦薬品には全国10箇所の拠点となる「物流センター(TBC)」があり、そこから全国の支店へ医薬品が供給されています。

このTBCというのがすごくて、災害時の物流確保のための非常電源の確保やロボットピッキングにより出荷精度99.99999%を実現してノー検品を実現しています。
ちなみにTBCは「Toho Butsuryu Center」の略だそうです。まさかのブツリュウセンターの略でした。笑
物流のイメージ
まずは製薬会社から拠点である各物流センターに送られます。
ちなみに製薬会社も工場を複数箇所に設置しており災害対策など十分になされています。

全国10か所程度に集中して集められた医薬品は更に各都道府県にある倉庫機能も持っている支店や営業所に送られます。

その後、営業所から配送業者によって病院や薬局など医療機関に届けられています。

最近は各医薬品卸の管理体制が充実してきて、大体の会社が前日に注文したものはTBCのような『大型物流センター』が注文に沿ってピッキング+箱詰めまで行い『営業所』では箱を開封せず医療機関に送られるのが主流のようです。
ただ、医薬品は至急で処方され求められるものあるため営業所が倉庫として機能しある程度の在庫も確保していただいています。
物流構造から何に気をつければよいのか?
上記を知っていることで特にジェネリックメーカーによって納品が遅いものがある際に事情を理解することができます。
何故か納期が長い医薬品
日々調剤をしている医薬品は基本的には翌朝には薬局に納品される医薬品が多いですが、物によっては1週間以上先に納品予定となっているものがあり疑問に思ったことはないでしょうか?
調べてみると出荷制限もないことから不便だなと思うこともあるかと思います。
その遅延の理由は物流の流れと卸の『センター在庫』が関わってきます。
『(物流)センター在庫』と『支店在庫』
医薬品卸の営業であるMSさんやコールセンターの人に発注を依頼すると

その商品は「センター在庫」があるんで明日には納品できます!



その商品は「支店在庫」があるので午後便でお届けします!



その商品は「メーカー発注」になるので翌週月曜ですね。
といったように『センター在庫』や『支店在庫』と言う言葉を使い分けて連絡をもらっていないでしょうか?
欠品をしすぐにでも飲まなければならない医薬品の場合、何としてでも当日中にほしい薬がある場合がありますが流通の図を見てみると『支店在庫』がない場合は医薬品卸としても物理的に準備ができない事情があるのです。
後発品の注文のときに医薬品の卸在庫を気にしたほうが良い理由
さらに医薬品卸には得意な製薬メーカーとあまり取扱いのないメーカーがあります。
PMDAで「ランソプラゾール」を検索してみると21件ヒットします。それらをすべて物流倉庫に保管すると膨大な金額になります。
更に日本で使用できる医療用医薬品は日本ジェネリック協会によると13,000品目、医薬品卸はそれに加えてワクチンや検査キット、OTCなど様々な品目を取り扱っているためすべての商品をすべての医療機関に十分に配送できるための体制を整えるのは現実的に無理であることは容易に想像がつきます。
医薬品卸の在庫はよく取り扱いのある医薬品がおいてあることが多くあまりプロモーションをしていない会社のものだと『センター在庫』がなく、メーカーから発注しなければならないためその分タイムロスが生まれます。
流通の視点で新しい医薬品を採用するときに気をつけたいポイント
後発品を採用するときは錠剤の大きさだったり添加物だったりと薬学的な視点で様々なことを気にして採用しますが、それに加えて卸の流通という視点で考えてみます。
先程から言っている通り卸の『センター在庫』や『支店在庫』を気にするとより早く医薬品を手に入れることができます。
新発売の医薬品だと読めないところもあるのですが、例えば【般】エナラプリルマレイン酸5mg(先発品:レニベース)の処方が久しぶりに受け在庫がなかったとしましょう。
薬剤師としては体内動態の違いなど問題がないかを調べたいところでありますが、昨今の出荷が不安定ということもあり医薬品卸から取れるものを聞く必要があります。そのときに



エナラプリル5mgで『支店在庫』しているものってどこのメーカーですか?
という聞き方をしみてください。
タイミングによってはたまたま支店の在庫がない場合もありますが、『支店在庫』がある場合は他の薬局でも動いている商品であり同時に『センター在庫』もあることになります。



現状ですと「サワイ」「VTRS」「オーハラ」が取り扱いあります。
といった感じで、卸さんの都合の良い商品を教えてもらえることになります。
現在先発品を含めて15種類のエナラプリル5mgが発売されているようなので、15個全部調べるよりかは卸さんの都合に合わせて数種類に絞り、その後に錠剤の大きさや薬価などを比較して決めていくのも一つの方法かと思います。
医薬品の注文は流通の事情も考慮するとより安定する
医薬品特にジェネリック医薬品を採用するときは薬価や見た目など患者さんの目線で混乱の無いように選ぶのが前提ではありますが、物流が不安定な昨今ではより安定して流通している医薬品を選定するということも重要になってきます。
初めて処方を受けた製品や、毎回毎回欠品してヒヤヒヤする製品があったら一度医薬品卸に相談して「卸の得意な医薬品」に変えられないかの検討もしてみてください。
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