はじめに
一度退職をして出産や育児を経て薬剤師として復帰を考えるとき、多くの人は『子どももまだ小さいしフルタイムは無理だな。短時間パートで復帰が良いのかな?』と考える人も多いと思います。
時短パートとして復帰することを考えるに当たり
「短時間勤務なら入らなくても良いって聞いたけど実際どうなの?」
「会社の大きさによって違うとか聞いたことあるけどそのへんはどうなの?」
そんな心配が出てくるかと思います。
今回は社会保険の加入条件と中小企業で働くことのメリットを会社目線と働くパート薬剤師目線で解説していきます。
社会保険ってそもそもなんですか?
社会保険があることによって国民皆保険が成り立ち自己負担が3割で医療を受けられたり、会社員として厚生年金を払うことで将来年金の額が増えたりするなど日本で安心して生活していくうえでは欠かせない制度です。
社会保険と一言で言っても国が運営・関与する公的な保険制度全体(健康保険・厚生年金保険・介護保険・雇用保険・労災保険)を指す広義の意味と、働くうえで関わってくる部分(健康保険・厚生年金保険)を指す狭義の意味で言われることがありその都度意味が違ってきます。
今回は働いて給料をもらうときに従業員と会社が関わってくる狭義の意味である健康保険や厚生年金に焦点を当ててみていきます。
狭義の意味である健康保険や厚生年金は加入する条件が決まっていたり、収入によって支払う金額が大きくなるなど制度を理解していないと割高に払ってしまう可能性がありますので制度を理解して有効活用していきましょう。
会社員が社会保険に加入する条件
正社員としてフルタイムで勤務する従業員は加入が必須となりますが、パート・アルバイトなど短時間労働者は会社の規模や働く時間によって変わってきますので理解しておきましょう。
パート・アルバイトなどの短時間労働者について加入できる人の条件は以下のとおりです
- 1週間及び1ヶ月の労働時間が、常勤で同様の業務を行う4分の3以上
もしくは以下の条件をすべて満たす人
- 週20時間以上の勤務
- 月額賃金8.8万円以上
- 学生ではない
- 常時51人を超える企業 ※2024年10月より拡大
中小企業で働くべきか?といったことを考えるに当たり『⑤51人を超える企業であるかどうか?』というところがポイントとなってきます。
配偶者や家族の扶養内で働こうと考えている方はこの社会保険における加入条件は抑えておきましょう。
社会保険に入るメリットとデメリット
今回はテーマを『中小企業でパート薬剤師として働くメリット』としたいので社会保険に入るメリットとデメリットについてはざっくり解説します。
求職者からみた社会保険に入るメリット
- 病気や怪我のときに健康保険で手厚く保証される(家族の扶養に入る場合は会社によるが同様の期待ができる)
- 将来の厚生年金が国民年金に上乗せされるため増える
- 出産・育児・傷病時に給付制度を使える
求職者からみた社会保険に入るデメリット
- 保険料の自己負担が発生する(労使折半)
- 扶養の範囲を超えてしまうと配偶者側の控除などが受けられなくなることがある
と言った感じでメリットとしたら手厚い保証が受けられること、デメリットとしては金銭的な負担が増えると言ったところです。

もらえる年金が増えるならいいじゃん!
と思うかもしれませんが、社会保険料の負担とその分増える年金の金額については何歳から年金をもらって何歳まで受け取る(生きる)のかも計算に入れなければならないのでそう簡単なものではありません。
企業側から見た社会保険に入るメリット
- 働いている人に社会保険に入っているという安心感を与えることができる
- 従業員の働く時間や給与額によっては加入義務が発生することもあり管理が必要
企業側から見た社会保険に入るデメリット
- 事業主負担の保険料が増える(労使折半)
- 年金事務所などへの手続きや管理など事務負担が増える
以上のように企業側から言うとメリットはあまりありません。一方でデメリットとしては求職者と同様に金銭的な負担がかかると言ったところです。
ブランクがある薬剤師が復帰するに当たり中小企業がちょうどよい理由
上記のように社会保険に入るということは従業員側にも採用する企業側にも金銭的な負担が増えることになりますが、社会保険に入らない働き方をすることで特に企業側が雇用しやすくなります。
週に4回×4時間(午前中)=16時間であれば20時間に満たないため社会保険に加入する必要はありません。
薬局は一般的に午前中に患者さんが集中することも多く、午前中の忙しい時間だけ働いてくれる働き方や常勤の薬剤師が在宅業務のために離れなければならないときに変わりに店舗に立ってくれる薬剤師は重宝されることも事実です。
社会保険に入らないことで雇用の金銭的や事務的なコストを下げられるため採用のハードルが下がり、求職者側からも『社会保険に加入しないほうが良いので、週に20時間しか働けないんですよね』と言った感じで労働時間を少なく抑えたい人の大きな盾となってくれる可能性も高くなってきます。
まとめ
パート薬剤師として復職を考えるとき「社会保険に入るか」は大きなポイントです。
社会保険に加入するかどうかは50人以下の会社であるかどうかというところも大事になってきますがそのような小規模の会社は社長との距離も近く色々と相談しながら雇用条件を調整することも可能であることが多いかと思います。
中小企業で短時間労働をする働き方は求職者にとっても採用する企業にとってもお互いに『都合の良い』働き方でありメリットが有る可能性が高いです。
転職を考える際に『社会保険』というところに目を向けて従業員数などを少し気をつけながら探す方法もあるということも頭の片隅に入れてみてください。
社会の制度を理解してより求職者と企業とがより良い関係で働ける環境を探していきましょう。
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