前回の記事では、福島県の薬局893施設の調剤ベースアップ評価料の届出状況を集計しました。届出率は78.8%で、福島県では「大手チェーンはほぼ全店、中小の薬局は約3割が未届出」という結果でした。
では、ほかの東北の県はどうでしょうか。今回は範囲を広げて、東北6県の保険薬局4,413施設をすべて数えてみました。すると、福島だけを見ていたときとは違う、意外な傾向が見えてきました。
結論:東北6県の届出率は78.3%。届け出ていない薬局に多いのは「小売系グループ」の薬局
- 東北6県の薬局4,413施設のうち、調剤ベースアップ評価料を届け出ているのは3,457施設(78.3%)
- 県ごとの差は小さく、76.6%〜80.9%の範囲におさまった
- 届け出ていない薬局が特に多かったのは、大手グループのうち「調剤基本料3ハ」の薬局(届出率62%)
- その3ハで届け出ていない薬局の94%が、ドラッグストアなど小売系グループの名称を含む薬局だった
- 福島県は例外で、ドラッグストア系が届け出ている一方、中小の薬局の届出率が6県で最も低い(71%)
県別ランキング
令和8年9月1日現在の東北厚生局の名簿をもとに、県ごとの届出率を出しました。
| 順位 | 県 | 届出あり | 薬局数 | 届出率 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 青森県 | 487 | 602 | 80.9% |
| 2 | 秋田県 | 391 | 493 | 79.3% |
| 3 | 岩手県 | 491 | 622 | 78.9% |
| 4 | 福島県 | 704 | 893 | 78.8% |
| 5 | 山形県 | 460 | 596 | 77.2% |
| 6 | 宮城県 | 924 | 1,207 | 76.6% |
| 東北6県 | 3,457 | 4,413 | 78.3% |
いちばん高い青森県といちばん低い宮城県の差は約4ポイントで、県による大きな差はありませんでした。どの県でも、おおむね5軒に4軒が届け出ていると言えます。
薬局の規模別に見ると
薬局は、グループの大きさや、特定の病院・診療所への処方箋の集中度によって「調剤基本料」の区分が分かれています。東北6県の合計で、区分ごとの届出率を見てみます。
| 区分 | 主にどんな薬局か | 届出あり | 割合 |
|---|---|---|---|
| 調剤基本料1 | 中小・個人の薬局が中心 | 2,112 / 2,732 | 77% |
| 調剤基本料3イ・3ロ | 大手グループで、特定の医療機関からの処方箋が多い薬局 | 686 / 749 | 92% |
| 調剤基本料3ハ | 大手グループで、処方箋の集中度が低い薬局(ドラッグストアなど小売系グループの薬局も多い区分) | 372 / 600 | 62% |
※この表は主な3つの区分を抜き出したもので、全施設をもれなく分類した表ではありません。名簿には、調剤基本料の記号が複数載っている施設や、該当する記号が見当たらない施設もあります。
福島県の記事では「大手チェーンはほぼ全店が届出済み」とお伝えしましたが、東北全体で見ると、大手グループでも「3ハ」の薬局は62%にとどまっていました。
県別・規模別の届出率
| 県 | 中小中心(調剤基本料1) | 大手(3イ・3ロ) | 大手(3ハ) |
|---|---|---|---|
| 青森県 | 82% | 96% | 61% |
| 岩手県 | 78% | 96% | 52% |
| 宮城県 | 78% | 85% | 55% |
| 秋田県 | 81% | 85% | 58% |
| 山形県 | 78% | 90% | 57% |
| 福島県 | 71% | 98% | 81% |
福島県以外の5県では、3ハの届出率が52〜61%と低く、中小の薬局(78〜82%)を大きく下回っています。福島県だけが逆で、3ハは81%と高く、中小の薬局が71%と最も低くなっていました。
届け出ていない「3ハ」の94%は、小売系グループ名を含む薬局
では、届け出ていない3ハの薬局はどんな薬局なのでしょうか。名簿の薬局名を見ると、ドラッグストアやスーパーなどを運営する小売系グループの名称が目立ちました。
そこで、薬局名に「ツルハ」「ウエルシア」「クスリのアオキ」「イオン」「マツモトキヨシ」「セイムス」「ココカラファイン」「ハッピー」「カワチ」のいずれかを含む施設を数えました。
| 薬局のグループ | 小売系グループ名を含む薬局の割合 |
|---|---|
| 調剤基本料3ハ・届け出ていない薬局(228施設) | 94.3%(215施設) |
| 調剤基本料3ハ・届け出ている薬局(372施設) | 41.9%(156施設) |
| 参考:調剤基本料3イ・3ロ(749施設) | 4.7%(35施設) |
東北の調剤基本料3ハでは、ベースアップ評価料を届け出ていない薬局のほとんどが、小売系グループの名称を含む薬局でした。つまり東北全体で見ると、届け出ていない薬局は「中小の個人薬局」だけでなく、「小売系グループの調剤薬局」にも多いということになります。
ただし、これは薬局名による独自の分類です。実際に一般用医薬品などの売り場(店舗販売業)を併設しているか、職員が調剤と物販を兼ねているかまでは確認していません。また、なぜ届け出ていないのかも名簿からはわかりません。
考えられる理由のひとつとして、店舗販売業を併設する薬局では、評価料の収入を保険調剤に従事する職員の賃上げに使う必要があります。調剤と店舗販売の担当をはっきり分けられない場合は、保険調剤の収入の割合を使って対象の職員数を計算する扱いです。こうした管理の手間が届出の判断に影響した可能性はありますが、今回の集計だけで原因を断定することはできません。会社として、評価料とは別の財源で賃上げをしている可能性もあります。
ほかの加算に積極的な薬局ほど届け出ている
福島県と同じく、東北全体でも、ほかの加算との関係がはっきり出ました。ここでは、地域の医薬品供給や在宅などへの対応を評価する「地域支援・医薬品供給対応体制加算」と、電子処方箋などへの対応を評価する「電子的調剤情報連携体制整備加算」(いわゆる医療DXの加算)で比べています。
| 薬局の状態 | 評価料の届出あり |
|---|---|
| 地域支援・医薬品供給対応体制加算あり | 81%(3,381 / 4,181) |
| 地域支援・医薬品供給対応体制加算なし | 33%(76 / 232) |
| 電子的調剤情報連携体制整備加算(医療DX加算)あり | 84%(3,239 / 3,876) |
| 電子的調剤情報連携体制整備加算(医療DX加算)なし | 41%(218 / 537) |
制度の変化に合わせて手続きをこなせる体制がある薬局ほど、評価料も届け出ている傾向は、東北全体でも同じでした。
個人的な意見として、薬局は「厚生労働省が本部のチェーン店」のようなもので、国が方針を決めていくビジネスモデルです(引越し転職に強い『薬剤師』と『マクドナルドクルー』の共通点でも書きました)。特に最近は、基本的な点数だけでは収入が減ってしまい、加算を取っていかないと現状維持が難しい調剤報酬改定が続いています。
そのため、こうした加算を取っているかどうかを見ると、経営者がどれくらい積極的に制度に対応し、利益を出そうとしているかが見えてきます。将来性のある薬局かどうかを見分けるポイントのひとつだと思います。もちろん、加算の有無だけで経営の良し悪しが決まるわけではないので、ほかの条件とあわせて判断する材料にしてください。
ほとんどの薬局は6月から算定を始めていた
届け出ている3,457施設のうち、3,277施設(94.8%)が制度が始まった2026年6月1日から算定を始めていました。7月からが130施設、8月からが20施設、9月からが30施設です。届け出る薬局の多くは、最初から準備を整えていたことがわかります。
後から届出を行う薬局は少なからずあるので、もし候補の薬局が加算を取っていない場合は面接時に「ベースアップ評価料は取っていく予定はありますか?」と質問をしてみても良いでしょう。
届け出ていない=賃上げしていない、ではありません
名簿で届出が見当たらないことだけで、「賃上げをしていない薬局」とは判断できません。対象になる職員(40歳未満の薬剤師や事務職員)がいない、会社独自の財源で賃上げをしている、名簿の基準日より後に届け出た、といった事情も考えられます。くわしくは福島県の記事で解説しています。
転職を考えている人へ
今回の結果から、東北で転職先を探すときは、次の点を意識するとよさそうです。
- 特にドラッグストアなど小売系グループの調剤薬局に応募するなら、評価料を届け出ているか、届け出ていない場合はどんな形で賃上げをしているかを確認する
- 福島県で中小の薬局に応募するなら、届出の有無を確認する(福島は中小の届出率が71%と東北で最も低い)
- 届け出ていても、基本給と手当のどちらに反映しているか、自分が対象になるかを面接で聞く
届出の有無は、厚生局の名簿で調べられます。調べ方は薬局の厚生局への届出(加算取得)状況を確認する方法をご覧ください。
まとめ
- 東北6県の届出率は78.3%(4,413施設中3,457施設)。県ごとの差は小さい(76.6〜80.9%)
- 大手グループのうち「調剤基本料3ハ」の届出率は62%と低く、届け出ていない薬局の94%が小売系グループの名称を含む薬局
- 福島県は例外で、中小の薬局の届出率が71%と東北で最も低い
- 届け出た薬局の94.8%は、制度開始の6月から算定していた
次回は、都会(東京・大阪)や西日本の県と比べて、東北の特徴がどこまで当てはまるのかを調べる予定です。
集計方法と注意事項
- 集計資料:東北厚生局「施設基準の届出等受理医療機関名簿」(薬局)東北6県分(Excel版)
- 基準日:令和8年9月1日(令和8年10月2日作成)
- 分母:名簿に載っている保険薬局4,413施設(同じ薬局は1施設として集計)
- 分子:受理記号に「調剤ベ」がある施設
- 規模の区分は、名簿に載っている調剤基本料の届出(調剤基本料1・2・3イ・3ロ・3ハなど)で分類
- 「小売系グループ名を含む薬局」は、薬局名に上記9つの言葉のいずれかを含む施設を数えたもので、実際の業態や店舗販売業の併設を確認したものではありません
- 本記事の割合は届出の受理状況から出したもので、実際の請求の割合ではありません。基準日より後の届出は反映していません
- 個別の薬局名は掲載していません

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